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専門記述最新問題の分析①(行政法)

お久しぶりですアドバイザーのです!
今回から,僕の書く記事は国家総合職試験大卒法律区分,院卒行政区分の専門記述問題(法律)を取り上げたいと思います。国家総合職の専門記述試験の内容や難易度を皆さんに早い段階で把握していただくことで,効率の良いインプット学習が出来ることに役立てると思ったからですそこで,平成26年で実際に出題された問題についてお話したいと思います

今回は行政法の問題を取り上げたいと思います記事の最後のほうに答案形式でまとめてあるので,興味ある方はご覧ください残念な内容だったら申し訳ありません

まず問題文を載せます。


【2014年】
次の事例について,以下の設問(1)~(3)に答えなさい。

[事例]
Aは,P県内でスーパー(以下[本件店舗]という。)を経営している者であり,牛肉その他の商品を販売している。Aは,農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という。)にいう「製造業者等」に当たる者である。
P県の農林水産部農政企画局における担当課職員らは,平成26年3月18日,本件店舗に対する調査を行い,そこで販売されている牛肉の仕入情報等を記した帳簿を,Aの同意を得て持ち帰った。
担当課職員らは,帳簿を調べた結果,Aが,和牛と記載したシール(以下「本件シール」という。)を貼付して販売している「牛ロース肉すき焼き用」という名称の商品(以下「本件商品」という。)について,和牛と表示することができない品種の牛の肉であると判断した。そして,担当課職員が,平成26年3月28日に,このことをAに電話で指摘したところ,Aは,同日から直ちに本件商品に本件シールを貼付することを取りやめた。
その後,P県知事は,Aが本件店舗で,本件商品に1年以上前から本件シールを貼付し,少なくとも平成26年2月18日から同年3月28日までの間に陳列,販売したことを認定し,これらは,JAS法第19条の13第1項の規定に基づき定められた生鮮食品品質表示基準第6条(1)に違反するとの判断を固めた。
P県知事は,このことを理由に,平成26年4月11日付けで,Aに対し,JAS法第19条の14第1項の規定に基づき,「貴店が販売していた牛肉の一部に不適正な表示が行われた原因を究明し分析すること,貴店における表示チェックの責任の所在を明確にするとともに,再発防止対策を実施すること」等の内容の指示(以下「本件指示」という。)をした。なお,都道府県知事は,JAS法第23条第2項及び同項の規定に基づき定められた政令により,JAS法第19条の14第1項に基づく指示をする権限を委任されている。
P県は,平成26年4月15日,Aに対し本件指示をしたことを公表した。このことは新聞各紙で報道された。
なお,和牛の肉とは,黒毛和種等の特定の品種の牛の肉のみを指す表示として用いられることとされており,販売業者は,それ以外の品種の牛の肉を和牛の肉と表示し,又は和牛の肉と誤認されるおそれかおる表示をすると,生鮮食品品質表示基準第6条(1)違反になるとするものとする。

(1)Aが本件指示に従わなかった場合,P県側としては続いて,JAS法に基づくどのような措置を採ることを検討するべきか。また,Aがその措置に従わなかった場合,Aが従うよう強制するためにP県側が採り得る手段はあるか。

(2)P県の担当課職員は,「Aが本件指示を受けたことに憤慨しており,その取消訴訟を提起することを検討しているらしい」という情報を得たP県の立場から,本件指示は,取消訴訟の対象にはならないという主張を構成しなさい。

(3)Aが内部調査をしたところ,次の①及び②の事実が新たに判明した。このことを踏まえ,Aは,P県が本件指示をして公表したことにより,スーパーとしての信用を失い,売上減少などの財産的損害を被ったとして,同県に対して損害賠償請求をすることを検討している。
Aの立場から,国家賠償法第1条第1項の「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた」という要件に該当するという主張を構成しなさい。

① 本件商品は,従来から和牛の肉であったところ,Aは,より安価に提供するため,平成26年2月18日から,和牛表示ができない品種の牛の肉に切り替えることにしていた。帳簿上はそのような記載になっていた。しかし,店員への指示を失念したため,同年2月18日以降も,本件シールの貼付が続いていたものである。
② ところが実際には,仕入先の手違いで,平成26年2月18日以降も,従来どおりの和牛の肉がAに納入され続けていた。その結果,少なくとも同年3月28日までの間,店頭には,和牛表示をすることができる品種の牛の肉が,本件商品として陳列,販売されていた。帳簿の記載と,実際の本件商品との間に,かい離が生まれていたのである。なお,P県の担当課職員らは,本件指示をするに当たって,本件商品の品質検査をしていない。

(参考)
○ 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
第1章 総則
(法律の目的)
第1条 この法律は,適正かつ合理的な農林物資の規格を制定し,これを普及させることによつて,農林物資の品質の改善,生産の合理化,取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図るとともに,農林物資の品質に関する適正な表示を行なわせることによつて一般消費者の選択に資し,もつて農林物資の生産及び流通の円滑化,消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護に寄与することを目的とする。
(定義等)
第2条① この法律で「農林物資」とは,次の各号に掲げる物資をいう。ただし,酒類並びに薬事法(略)に規定する医薬品,医薬部外品及び化粧品を除く。
一 飲食料品及び油脂
二 (略)
②~⑤ (略)
第5章 品質表示等の適正化
(製造業者等が守るべき表示の基準)
第19条の13① 内閣総理大臣は,飲食料品の品質に関する表示の適正化を図り一般消費者の選択に資するため,農林物資のうち飲食料品(略)の品質に関する表示について,内閣府令で定める区分ごとに,次に掲げる事項のうち必要な事項につき,その製造業者等が守るべき基準を定めなければならない。
一 名称,原料又は材料,保存の方法,原産地その他表示すべき事項
二 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者等が遵守すべき事項
②~⑦(略)
(品質に関する表示の基準の遵守)
第19条の13の2 製造業者等は,前条第1項から第3項までの規定により定められた品質に関する表示の基準に従い,農林物資の品質に関する表示をしなければならない。
(表示に関する指示等)
第19条の14① 第19条の13第1項若しくは第2項の規定により定められた同条第1項第1号に掲げる事項(以下「表示事項」という。)を表示せず,又は同項若しくは同条第2項の規定により定められた同条第1項第2号に掲げる事項(以下「遵守事項」という。)を遵守しない製造業者等かあるときは,内閣総理大臣又は農林水産大臣(内閣府令・農林水産省令で定める表示の方法については,内閣総理大臣。次項において同じ。)は,当該製造業者等に対して,表示事項を表示し,又は遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができる。
②③(略)
④ 内閣総理大臣は,第1項又は第2項の規定による指示を受けた者が,正当な理由がなくてその指示に係る措置をとらなかったときは,その者に対し,その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
⑤(略)
第19条の14の2 前条の規定により指示又は命令が行われるときは,これと併せてその旨の公表が行われるものとする。
第6章 雑則
(権限の委任等)
第23条① 内閣総理大臣は,この法律の規定による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。
②この法律に規定する農林水産大臣の権限及び前項の規定により消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は,政令で定めるところにより,都道府県知事が行うこととすることができる。
③(略)
第7章 罰則
第24条 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一~七 (略)
八 第19条の14第4項の規定による命令に違反した者

○ 生鮮食品品質表示基準(※)
※ この基準は,JAS法第19条の13第1項に基づく「製造業者等が守るべき基準」として,「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の規定に基づく飲食料品の区分等に関する内閣府令」で定める区分ごとに定められ,告示されたものである。
(適用の範囲)
第1条 この基準は,生鮮食品に適用する。
(表示禁止事項)
第6条次に掲げる事項は,これを表示してはならない。
(1)実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
(2)第3条又は第4条の2の規定により表示すべき事項の内容と矛盾する用語
(3)その他製品の品質を誤認させるような文字,絵,写真その他の表示




次に,本問の事例をざっくりと説明しますね

AさんというP県内でスーパーを経営している人がいました。この人が販売している商品の中に,和牛と記載したシール(「本件シール」)を貼った牛ロース肉すき焼き用(本件商品)というというものがありました。ところがP県の職員さんはAさんの帳簿の記載を見て,このお肉が和牛と表示しちゃいけない品種の牛肉だと判断したんですね。

職員さんはAさんに電話してこのことを指摘し,Aさんは直ちにシールの貼付をやめました。
 
その後,この職員さんの報告があったのでしょうか,P県の知事さんが和牛と記載しちゃいけないのにシールを貼ってお肉を陳列,販売したことを認定し,これはJAS法に反する不適切な表示だとして,Aさんに対し,「あなたが販売したお肉の表示に不適正な表示があったことの原因を究明して分析してください」「再発防止対策を講じてください」等といった指示をしました(「本件指示」,JAS法19条の14第1項)。なおこの本件指示はJAS法で都道府県知事が行うことが出来る権限が与えられています。

そして,JAS法ではこの「指示」があった場合,その事実を「公表」してくださいという規定(JAS法19条の14の2)があったので,P県知事はこれに則り,公表を行いました。これにより,本件指示があったことが新聞各紙で報道されてしまいました。

以上が問題文の事実です

設問(1)に行きましょう!

設問(1)は,①Aさんが本件指示に従わなかった場合,P県はJAS法の規定に基づくどのような措置を採ることを検討すべきか②また,Aさんがその措置に従わなかった場合,Aが従うように強制するためにP県側が採り得る手段はあるか,の2点が問われています

①について見ていくと,これは知識で解く問題ではなく,問題文に挙げられている個別法を読み取るといった現場思考型の問題ですといっても,難しいわけじゃありません

もう一度Aさんの状況を確認すると,Aさんは「和牛」と表示しちゃいけない牛肉を「和牛」と記載して販売したことにつき,P県から原因究明や再発防止策の実施を指示されていたんですよねAさんがこれに従わない場合,P県としてはAが従わざるを得ないような手段が取れないと,打つ手がないです

ですので,このような規定がJAS法にないか探せばいいわけです
ちなみに,さっき述べた「公表」はこれに含まれませんJAS法は,指示をした場合には相手方が指示に従うか否かに関係なく公表がなされるという法的仕組みになっているからです(公表する・しないに関する効果裁量がない仕組みです)ですので「公表」は「指示」に従わなかった場合の措置としては予定されていないと考えられます

そこで,問題文に挙げられているJAS法の他の条文を見ていくと,正当な理由なく指示に係る措置に従わなかった場合,指示に係る措置をとるべきことを命じることができるといった規定があります(JAS法19条の14第4項)。ですので,この措置命令を挙げることができればOKなはずです

では②に移ります。
まずJAS法の規定を見ていくと,先ほどの措置命令に違反した場合,懲役・罰金といった行政刑罰が課される仕組みになっています(JAS法24条8号)。ではこれは「Aが従うように強制するためにP県側が採り得る手段」といえるのかというとどうでしょう

たしかに措置命令違反をすると刑罰が課されるとなると,たいていの人はこれを避けようとして措置命令に従いますその意味では,この行政刑罰は措置命令による義務の履行を強制するために役立つ手段ではあります

ですが,本問はあくまで「Aさんがその措置に従わなかった場合,Aが従うように強制するためにP県側が採り得る手段」について聞かれています。つまりAさんが措置命令に従わない場合に,強制的に従わせるために採る手段ではありませんイメージとしては命令に従ってもらうことは諦めて、代わりにペナルティを科すといった感じです。

よって,他の手段を検討する必要があります

JAS法では他に検討できそうな規定がないので,行政上の強制執行の一般法である行政代執行を検討することになります

しかし,行政代執行の対象となる義務は代替的作為義務である必要があります

本問の、措置命令によって課される義務についてはどうでしょう。P県がAさんに代わって行えるようなものでしょうか

措置命令によって課される義務は,本件指示(和牛の誤表示についての原因究明や再発防止策の実施)に従う義務のことですこのような義務の性質上,当事者であるAさんしかできないことであって,P県が代わりにできるようなものではないですよねよって,代替的作為義務とはいえず,行政代執行はなしえないこととなります

以上から,②については該当手段がないと考えられます


では設問(2)に行きましょう!

設問(2)は,本件指示を受け怒ってしまったAさんのが,本件指示取消訴訟を提起することとなりました。本問は,本件指示が取消対象とはならないとの主張をP県が行うとして,どのような主張をすべきかが問われています。本件指示という行為に着目していることから,問題となるのは処分性であることが明らかですよねさっそく,見ていきましょう

まず定番の処分の定義からですね取消訴訟の対象となる「処分」とは①公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、②直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいいます本件指示が①を充たすことは明らかなので,②が問題となりますねP県側の主張を考えるわけですから,②を充たさないといった主張を考えてみましょう

本件指示って法的地位を変動させるような効果がありますかね

本件指示は先ほども述べたように,P県が原因究明や再発防止策の実施することを指示する内容のものですから、義務を強制するものではないといえそうですそうすると,本件指示は相手の任意に委ねられた事実上の措置であり、行政指導に当たるといえ,原則として処分性が否定されると考えられます

もっとも,先述のように,JAS法は「指示」があると,すぐに「公表」が行われるという仕組みになっています「公表」ってAさんからしたらすごくイヤですよね和牛ってウソの記載があるお肉を売ったから,知事さんに注意されてるってことが公にされちゃうわけですから,Aさんのスーパーの業務上の信用は著しく損なわれてしまいますそして,仮にこの「公表」が「指示」に従わなかったことに対する制裁手段としての位置づけであるとされた場合,「公表」は国民の権利利益(おそらく名誉権やプライバシー,業務上の信用といった利益でしょうか)を侵害する行為といえ,処分に当たるといえそうですそうすると,「指示」があれば,「公表」による不利益を受けることは確実となり,処分性が肯定される余地があります

しかし,本件の「公表」は「指示」に従ったとしても実行されるものですから,「指示」に従わなかったことに対する制裁手段とは言えないと考えられます

むしろ,この「公表」は,県民に周知させるための情報提供を目的とした事実行為といえそうですこのことは,JAS法が消費者利益の保護(JAS法1条)を目的としていることからも裏付けることができそうです

以上のように,「指示」は行政指導,「公表」は事実行為と解釈できるため,本件指示には法的地位を変動させるような効果があるとはいえず,②を充たさないといった立論が可能だと思います

ラストの設問(3)を見てみましょう!

本問は,上記の問題文に加え新たな事実が追加されますどのような事実化というと,Aさんが内部調査を行ったところ,Aさんは元々和牛のお肉を販売していたんですが,より安く売りたいと思って,和牛表示できない品種に切り替えることを決め,帳簿にもそのような記載をしていましたはじめに登場したP県の職員さんはこの帳簿の記載を見て,Aさんの売ってるお肉は,和牛と表示しちゃいけないものだ,と判断していましたねつまり,P県の職員さんは帳簿の記載だけ見てるだけで判断したのであり,ちゃんと売ったいたお肉が和牛なのか品質を検査したりはしていなかったんですね

ところが,お肉の仕入先の手違いで,Aさんのスーパーには従前どおり和牛のお肉が納入されていたんですAさんとしては,ちゃんと品質検査までしてくれたら,和牛表示ができるちゃんとしたお肉を販売していたことが判明したのに,それをしてくれなかったせいで,いわれのない「本件指示」を受け,さらに「公表」までされて信用を傷つけられることはなかったのですから,P県に対し,賠償請求をしたいところです

そこで,Aさんの立場から,国賠法1条1項の要件を充たす旨の主張を考えるのが本問です。

ここで要件を確認しましょう。要件は、
①国又は公共団体の
②公権力の行使にあたる
③公務員が
④その職務を行うについて
⑤故意又は過失によって
⑥違法に
⑦他人に損害を加えた

ことです多いですよねでもこんなの全部検討する必要ありませんP県職員の調査に基づいてP県知事が本件指示を出し、Aに財産的損害を加えていることから①③④⑦は当然に充たしているといえます
検討すべきは残りの②⑤⑥のみです

②について、本件指示は先述のとおり行政指導と認定したので,非権力行為である行政指導が「公権力の行使」にあたるか,といった論点について欠くべきだと考えます判例上,「公権力の行使」とは広く、純粋な私経済作用と国家賠償法2条で救済される場合を除く、すべての行政作用が含まれると解されています。要は範囲がすっげー広いってことですよって、非権力行為であろうが「公権力の行使」にあたり、②も充たすこととなります

次に⑤の過失につき検討します「過失」とは職務上要求される標準的な注意義務に違反したことをいいますAさんから見れば,P県に嘘つき呼ばわりされているわけですから,「お肉の中身までちゃんと調査した上でいいやがれ!それをしないなんて怠慢だ!」って言いたくなりますよね

ですので,本件指示をする前提として,P県職員に品質検査まで実施させることが職務上要求される標準的な注意義務だって主張する必要がありますそして,これを怠った点で過失を認定できます

最後に⑥ですここは違法・過失一元論をとってさっさと終わらせていいと思いますつまり,違法の有無の判断は,過失と別個にではなく,一元的に判断するという見解ですこれによれば,⑤を充足する本件では⑥を充足することになります

よって,Aは国賠法1条1項に基づく賠償請求ができるといった結論になります


以上です超長文にお付き合いいただきありがとうございました最後まで飽きずに読んでくれた方がいたら本当にうれしいのですが今回の記事が皆さんの過去問分析や普段の学習の便宜となれば幸いです次回の記事はまた12月頭くらいに,民法あたりをやろうかなと思います

最後に答案形式でのまとめを載せて締めくくらせていただきます

第1(1)について
1 Aが本件指示に従わなかった場合、P県側としていかなる措置が検討されるか。
(1)本件指示に従わない場合は、それに正当な理由がないことを前提に、続く措置としてJAS法は第19条の4第4項に、内閣総理大臣による本件指示にかかる措置を採るべきことを命ずることを規定している。

(2)本件では、同法23条2項及び同項の規定に基づいて定められた政令により、P県知事が措置命令を行う権限が委任されているので、P県側としては、当該措置を採ることを検討すべきである。

2 上記命令にも違反して従わなかった場合、P県側は強制するための手段としていかなる手段を採りうるか。
  この点、義務の不履行に対する強制手段としては行政代執行法に規定された行政代執行が考えられるが、行政代執行の対象となる義務は代替的作為義務である必要がある。
  しかし、本問において、措置命令によって課される義務は、本件指示に従う義務であるため、代替的作為義務とはいえず,行政代執行はなしえない。なお、JAS法第24条8号は、措置命令違反に対する行政刑罰を規定するところ、これは過去の行政上の義務違反に対する刑事的制裁であって、義務に従うよう強制するための手段とは言い難い。

第2(2)について
  本件指示が、Aが検討している取消訴訟の対象とならない、という構成を検討する。取消訴訟の訴訟要件として、本件指示に処分性(行政事件訴訟法3条2項)が認められる必要があるが、P県の立場からは、本件指示は当該要件を充足しないという主張を構成すべきである。

1 そこで具体的に検討するに、そもそも処分とは公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

2 本件指示につきみると、本件指示は遵守事項を遵守することを指示するものに過ぎず、義務を強制するものではないから、相手の任意に委ねられた事実上の措置であり、行政指導に当たるため、原則として処分にはあたらない。
  また、本件指示がなされれば、常にその旨の公表もなされることになる(JAS法19条の14の2)が、これは消費者利益の保護(JAS法1条)のための情報提供を目的とするものであり、指示の遵守を強制する意味を有しないから、公表制度の存在が本件指示の処分性を肯定する理由とはなり得ない。

3 よって、本件指示は直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないため、原則どおり処分性を欠き、取消訴訟の対象とならない。

第3(3)について
1 本件が国家賠償法1条の要件に該当するか検討する。要件は、①国又は公共団体の②公権力の行使にあたる③公務員が④その職務を行うについて⑤故意又は過失によって⑥違法に⑦他人に損害を加えた、ことである。本件ではP県職員の調査に基づいて農林水産大臣から権限の委任をうけたP県知事が本件指示を出し、Aに財産的損害を加えていることから①③④⑦は充たしているといえる。

2 次に②についてみるに、本件指示は先述のとおり行政指導にあたるところ,非権力行為である行政指導も「公権力の行使」にあたるかが問題となる。国家賠償による被害者救済の要請から、「公権力の行使」とは広く、純粋な私経済作用と国家賠償法2条で救済される場合を除く、すべての行政作用が含まれると解すべきである。よって、行政指導も公権力の行使にあたり、本件では②も充たす。

3 次に、⑤の過失につき検討するに、過失とは職務上要求される標準的な注意義務に違反したことをいう。本問において、本件指示を出す前提としてP県知事は、本件指示を行う権限を有するものとして、少なくとも、本件商品として陳列、販売された肉が和牛表示することができるものか否か、P県職員に品質検査を実施させた上で判断すべき職務上の注意義務があるはずである。
  しかし、P県職員は本件指示をするにあたり品質検査をしていない。よって職務上要求される標準的な注意義務に違反したといえ、⑤も充たす。

4 次に⑥につきみるに、違法性とは、結果基準では公務員の職務に萎縮効果が生じることから、具体的状況下で職務上尽くすべき法的義務に違反することをいうため、過失とは一元的に判断すべきである。
よって、⑤を充足する本件では⑥も充足する。

5 よって、本件は国家賠償法1条1項の要件を充たし、Aは本件指示により生じた財産的損害につき国家賠償請求ができる。                                                                    
                 
以上


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